「もっと価格あがらないかなぁ」
トレードでもしていない限り、
ほとんどの中長期ホルダーは価格を見る度にこう思ってるのではないでしょうか?
そして、その為にどうすれば良いかも、
なんとなくは察しています。
需要をあげればいいんです。

よし。需要がトリガーなら需要をあげよう。
外的要因はどうしようもないから、
内的要因だ。
業績を伸ばそう。
マーケティング施策を実施しよう。
DApps開発しよう。
とは中々なりません。
- 注目プロジェクトの成功や開発チームの働きに希望を抱きながら待つ
- インフルエンサーが発言する事に期待する
- 可能な範囲内で宣伝
悲しいかなこのくらいしか出来ません。
ただし、それは他の暗号資産であればの話。
幸いカルダノには「カタリスト」があります。

横文字に強い人でもあまり耳馴染み無い単語ですが、
「Catalyst」とは本来は化学反応に組み込むことで
反応速度を上げたり、全体の熱エネルギーを下げる
といったような触媒効果をもたらす物質の事を言います。
身近なところでいうと、酵素などですね。
転じて『物事を促進させる要因』と言った意味合いで
使われます。
まさにカルダノのカタリストも、
エコシステムに貢献するプロジェクトを皆で決議
↓
資金援助
↓
カルダノの発展を促進
という様にとても重要なステップなのですが、なかなかどうして
スマートコントラクトやDeFiやNFT等の注目プロジェクトの
影に隠れて軽視されているきらいがあります。
理由は:
- カタリスト投票までの手順が面倒
- 直接的な報酬がほとんどないし罰則もないから後回し
- どのプロジェクトに投票したらいいのか分からない
- 英語でよく分からない
- 提案内容を聞いてもピンとこない
- お願いだから横文字減らして
色々ありますが、実は本当の理由は「2番」だけです。
投票するメリットがいまいちイメージ出来ないから。
その証拠に、手続きが多少面倒くさくても、
どのプールに委任したら良いか分からなくても、
資料がほとんど英語でも、専門用語が多くても、
カルダノの事を良く知らなくても、
その先に分かりやすい報酬があるから
ADA購入・ステーキングという行動に実際に移せています。
そのため以降では、
- カタリストは未来のADAの価値上昇を促進する
- カタリストはカルダノのミッション達成期間を短くする
という「報酬」から「その報酬の貰い方」に焦点を
当ててお話したいと思います。
カタリストとは?
❏ カタリスト概要
カタリストとは、カルダノ開発チームのIOGが
6週間ごとに開催している資金援助プログラムです。
カルダノに貢献するプロジェクトをユーザーが立案し、
それに賛同するADAホルダーが自分のADAを投票権として
どのプロジェクトが資金調達されるべきかを投票します。
以下はカタリストの流れです。
※ 資金の出どころは後述。

❏ カタリスト資金の出どころ
カタリストの資金はTreasury(トレジャリー)から分配されます。
トレジャリーはカルダノのブロックチェーン上に存在する
仮想の金庫のようなもので、主に以下から資金を調達しています。
- 新規発行ADA枚数の20%
- ステーキング予想報酬額から実際の報酬額を引いた差額
- トランザクション手数料
- 有志による寄付
(What Makes The Cardano Blockchain Treasury System Special?)
※ 寄付以外の集金はプログラムで制御されているため全自動です
現時点でどれくらいのADAがトレジャリーにあるかは、
こちらのADA発行枚数・ステーキング報酬額・トレジャリー記録から確認できます。
(1,000,000 lovelace = 1ADA)
ADAの発行枚数ですが、こちらは上限が450億枚で固定されているため、
時間経過と共に差し引かれる20%の額も減少してしまいます。
※ 2021年11月12日の時点では32,791,303,281ADA(73%)が発行済み

もちろんトランザクションが増えれば、徴収出来る手数料も増え、
トレジャリーの額は減りません。ただし・・・

上の図は2021年10月17日までの日間トランザクション数です。
ざっくり100,000トランザクション/1日 x $0.5手数料/1トランザクション x 7日/1週間 x 6週間
で計算すると6週間で210万ドルがトレジャリーに流れています。
Fund6では400万ドルの予算が用意されたので、
トランザクション手数料から割り当てられた分は52%。
将来的にこの数字が100%を越えなければカタリスト予算は削減されてしまいます。
さて、トランザクション数を増やすにはどうすれば良いでしょうか?
その答えは後半で触れます。
❏ カタリストの流れ
おおまかには以下の流れでカタリストは進行します。
1 | Insight Sharing | 課題に対する解決策のアイデア共有 |
2 | Submission | 提案内容をideascaleに提出 |
3 | Refine | ディスカッションを経て提案内容を洗練 |
4 | Finalize | 提案の確定 |
5 | Assess | ideascaleやvoter-toolで確認 ideascaleから提案を5段階評価 |
6 | Assess QA (Quality Assurance) | 不当な評価を報告出来る工程 |
7 | Snapshot | 投票力計算の為のスナップショット作成 |
8 | Voting | 投票 |
9 | Tallying | 集計 |
10 | Rewarding | 投票の報酬・資金分配 |
これらはFund6の工程ですが、カタリストは実験的プロジェクトのため、
今後も試行錯誤の結果、工程が増えたり減ったりする可能性が高いです。
基本的に提案内容の確認・質疑・評価などは
ideascaleと呼ばれるイノベーターの為のプラットフォームで
行われますので、登録して確認してみましょう。

カタリストの予定表はCardano Catalyst Community Siteで確認できます。
※ 予定表の内容は確定ではなく、変更の度に更新されます。

❏ カタリスト提案採択の仕組み
投票者はプロジェクト提案に対して「YES」「NO」を割り当てます。

「YES」が多ければ順位があがりますが、
投票回数ではなく、ウォレットのステーキング量が投票力になります。
例えば、1,000ADAのウォレット10個で「YES」に投票しても、
1つの10,000ADAのウォレットが「NO」に投票すれば、採択されません。
不平等に感じるかもしれませんが、1ウォレット1投票にすると、
ウォレットを量産するだけで悪質な投票が行われてしまうので
それよりはマシといった所でしょうか。
将来的にDID(ブロックチェーン上のID)が展開されれば、
DIDやクレジットに基づいての投票力の見直しが行われるかもしれませんね。
公式集計ルールには他にも以下の内容が記述されていました。
- YESのADA数とNOのADA数の差が最も大きいプロジェクトから順に採択
- YESのADA数はNOのADA数より大きくなければ採択されない
- YESのADA数はNOのADA数より15%以上大きい必要がある
❏ カタリスト投票で得られるADA
カタリストに投票するだけでADAを少しもらえます。
貰えるADAは以下の式で計算されます(2021年11月12日時点)。
※ 計算式出典元リンク(Google Document)

- Rj – ある参加者の報酬額
- stakej – ある参加者のステーク量
- staketotal – 参加者全体のステーク量
自分が投票ADA枚数が多ければ多いほど報酬は上がりますが、
全体の投票ADA枚数が多ければ多いほど報酬は下がりますね。
2021年7月6日の時点では、$1.45相当のADAが与えられたようです。
少ないと感じるかもしれませんが、
個人的には投票すればお金が貰えるだけで画期的だと思います。
❏ カタリストプロジェクトの種類
カタリストプロジェクトはいくつかのカテゴリーに分類されていています。
以下は投票者の為のツール(voter-tool)に記載されている内容の意訳です。
元サイトではもっと説明が長いのですが、大まかにだけ理解すればいいと思うので
所々はしょりました。
Developer ecosystem | DApps開発者の為に出来ることは? |
DApps & Integrations | DApps開発 |
Distributed decision making | カタリストにおける意思決定を支援 |
Proposer outreach | 外部の起業家にカタリスト提案させるには? |
Catalyst value onboarding | カタリストに参加させるには? |
Metadata challenge | メタデータを使った問題解決 |
Grow Africa, Grow Cardano | アフリカを発展させるには? |
Scale-UP Cardano's DeFi Ecosystem | DeFi開発を早めるには? |
Cardano Emerging Threat Alarm | システム脅威を未然に検知するには? |
Multilingual resources | 英語を話さない人々を巻き込むには? |
DeFi and Microlending for Africa | アフリカの為のマイクロファイナンスやDeFiの提供 |
DLT Entrepreneurship Toolbox | 初期段階の起業家を教育するには? |
Partnership for Global Adoption | UNDPや世界銀行と連携して規模を拡大するには? |
NFT Business | アート以外のNFTの活用法 |
Atala PRISM DID Mass Scale Adoption | Atala PRISM DIDを大規模で導入するには? |
Disaster: When all is at stake | SPOに効率的に災害時のテストを行ってもらうには? |
Scale-UP Cardano's Community Hubs | カルダノの認知度を上げるには? |
Improve and Grow Auditability | 資金調達プロセスをより効率化し、透明性を上げるには? |
❏ カタリストに投票するには
※ 登録可能期間や投票可能期間はIOGのスケジュールや
投票アプリのアップデート次第で変更する可能性があります。
カタリスト投票は必要か?
❏ カタリストは実験的プログラ
カルダノで開発する為の資金調達の方法として、ICOや寄付が
挙げられますが、こういったモデルは一時的に資金は確保
出来るものの、長期的にファンディングするには向いていません。
加えて集められた資金が内部的に「誰に」「いくら」分配されるのかが
管理されていないため、中央集権型に陥りやすいです。
カルダノのロードマップの最終フェーズ「Voltaire(ヴォルテール)」では
トレジャリーシステムを使い、ADA保有者の集合的な合意によって
より民主的で透明性の高い資金調達プロセスを自動で行えるようになります。

カタリストはこのVoltaireの為に
実験的に用意されたプログラムです。
つまり、
『カタリストの参加』 → 『実験データの提供』 → 『Voltaireの品質向上』
へと繋がります。
❏ 投票率が上がれば「当たりプロジェクト」も採択されやすい
仮にカタリスト提案に20%の確率で
「ADA価格を大幅に上げるスーパープロジェクト」が
含まれていて、投票者も80%の確率でどれか分かると仮定します。
※ 投票率のみの単純モデルなので、実際の現象とは異なります。
すると解るのが、投票数が少ない内はランダム要素が影響して
スーパープロジェクトも採択されない事がありますが、
投票参加率が上がるとスーパープロジェクトが採択される確率が
100に近づきます。
つまり投票者が平均して「目利きが出来ていれば」、
『投票率↑』 → 『スーパープロジェクト採択確率↑』 → 『ADA価格↑』

❏ 株主は議決権を行使する
上場株式会社をイメージしてみてください。
当期純利益の一部は外部流出として株主に配当され、
一部は将来の事業拡大のための任意積立金として内部留保しています。
『どの事業計画を遂行するかは株主の投票によって決まる』
これを踏まえると、カタリストは500ADA以上あれば
全員に議決権が与えられる株主総会と言えます。
積立金(カタリスト予算)は有限なので、株主(ADAホルダー)としては
株価(ADA価格)に『より好影響』を与える事業案を採択したい気持ちがあります。

ADA価格を$1あげる可能性を持ったカタリスト案を採択した事によって
ADA価格を$5あげる可能性を持ったカタリスト案が不採択になれば、
本来得られる利益を逃した『チャンスロス』が発生したとも言えます。
チャンスロスで最も怖いのは、ADAの価値が伸びないことよりも、
「ADA思ったよりあがらないな」と思われて売りが連鎖することで
価値が下がってしまうこと。
ステークホルダーとしてはその事態は
避けられるのならば避けたいですよね。
とはいえ、ADA価格を上げるプロジェクトなんて分からないよ!
そう思われるかもしれません。
私も分かりません。
それを考えるには、カルダノのエコシステム発展を「都市開発」の視点で見てみましょう。
どのプロジェクトが『カルダノシティ』を発展させる可能性がありそうでしょうか?
❏ カルダノは「都市」
現段階のカルダノを『都市開発』で表現するとこんな感じです。
大都市を想定した『基盤』は既に完成していて、各生活インフラは絶賛建設中。

都市開発要素 | カルダノ |
---|---|
一般道路 | トランザクション(整備済み) |
高速道路 | Hydra Layer2(建設中) |
道路整備の為の雇用 | ステーキング報酬 |
空港・湾港 | サイドチェーン(建設中) |
金融機関 | DeFi・DEX(建設中) |
支払い | トランザクション マイクロファイナンスは開発中 |
新規公開株(IPO) | IDO launchpad |
事業展開のしやすさ | IOGとパートナーシップ又はカタリストのみ |
学校や職業訓練などの教育プログラム | Pioneer Program カタリストで提案中 |
本人確認証明書 | Atala PRISM等のDID |
商業施設 | サービスやコモディティ待ち カタリストで提案中 |
警察機能 | カタリストで提案中 |
安全対策 | Ouroboros PoS カタリストで提案中 |
防災訓練や復興計画 | カタリストで提案中 |
イベント開催 | Summit・EXPO・NFTアート・ハードフォーク・ICO等 |
広報・PR活動(例えば高級住宅街の様なイメージ戦略など) | カタリストで提案中 |
予算委員会と執行 | カタリスト(将来的にはVoltaire) |
コミュニケーション | Telegram・Discord・Reddit・Twitter・Youtube まだ情報が非対称的で風説も流布しやすい印象 |
カルダノは都市で、ADAの価格は今の都市の状態における公示地価と考えると
「地価が中々上がらないのは重要施設・サービスの欠落」
とイメージしやすいのではないでしょうか。
それぞれのカタリストプロジェクトが、
カルダノを発展させる予算案だと思ってください。
その中には「地価」を大幅に上げうる可能性を持ったものもあれば、
緊急度が低めの物もあります。
どのプロジェクトが、ADAの需要を長期的にあげそうでしょうか?
直接的には地価を上げる能力はなくても、
導入されることによってボトルネックが開き、一気に発展するケースもあります。
DIDが付与されると信用取引が出来たり、
教育制度が充実して外部からの参入敷居が下がったり。
ぜひ一度「市長として大都市を作る要領」でカタリストプロジェクトを見てみてください。

どのカタリストプロジェクトを選べばいいのか?
❏ 誰がプロジェクトを選ぶのか?
結論から言うとプロジェクト評価は各々で行う必要があります。
理由は3つあります。
➢ 一つ目は学習につながらない事です。
「風のうわさ」や「信頼できる人の意見」を頼りに
Fund6で投票してしまうと、Fund7でもFund8でも無意識で決断を委ねてしまいます。
そして他人がおすすめするプロジェクトが
ADAの価格をあげるプロジェクトである保証はありませんし、
投票も「選挙カーの音量」が大きいプロジェクトに集中してしまいます。
➢ 二つ目は意思決定の分散のためです。
都市開発を例に出すと、ある政治家が推進する開発プロジェクトが
必ずしもその都市の発展を慮った提案とは限りません。
例えば外交の手札にするために国間貿易用の港湾建築を推奨したり、
選挙活動の為の道路舗装計画だったり、それぞれ思惑があります。
しかし出来るだけ各自が判断する事で意思決定プロセスをより分散すれば、
総合的にはカルダノの為になるという効果が見込めます。
➢ 三つ目は「色メガネのチカラ」を最大限利用するためです。
みんな育った環境も学んだ経験も違えばかけてる色メガネも異なります。
音楽業界に詳しければ楽曲NFT化プロジェクトを正しく評価できます。
流通業界に精通していれば野菜トークン化プロジェクトが現実的かわかります。
アニメ業界に明るければ、セル画NFT化プロジェクトも違って見えます。
マンションオーナーであれば、EV(PHV)プロジェクトの収益性に
誰よりも先に気がつくでしょう。
みんなが見えない盲点をあなた専用の色メガネが強調してくれます。
とは言え、最初から最後まで外部の意見を遮断して
自分だけで評価するべきとは言いません。
プロジェクト評価は以下の順番で行ってみてください。
- 評判の前にまず自分で一度評価する
- 既存の情報や意見を参考にする
- もう一度自分の目で評価する
アートを見る時、タイトルを先に読んでしまうと
『タイトル』通りの表現を自分から探しにいってしまいます。
ドキュメンタリー映像を見る時、
『テロップ』があると製作者の思惑通りの感情が湧き上がります。
プロジェクトも、
「見積もりが甘い」と聞けば見積もりの甘さを探してしまいますし、
「ミッションが崇高」と聞けばミッション性が強調されます。
確証バイアスをなくすためにも、プロジェクトは出来るだけ
『星評価』がつく前に一度ざっと見ましょう。
❏ 英語が苦手ならどうすればいい?
英語が苦手であれば、
Google翻訳はテキストもURLも貼り付けるだけで機械翻訳できます。
DeepLも優秀ですので活用出来ると思います。
❏ プロジェクトの提案はいくつ見ればいいか?
全ての提案を評価すれば、もっとも自分が納得出来る投票ができるでしょう。
しかしFund6の提案プロジェクトの数は831件。
1件5分で評価出来るとしても70時間近くかかってしまいます。
実はこの問題は面白くて、実生活でも似たような問題に
毎年・毎月・毎日のように私たちは直面しています。
- 何人と面接すれば最高の応募者を選び出せるか?
- 何人とデートすれば理想の相手と結婚できるか?
- 何個の銘柄をスクリーニングすれば良いポートフォリオが組めるか?
- 山のように陳列されてる醤油から何個しぼりこめばいいか?
- プールの委任先はどれくらいのプールを見てから選べば良いか?
提案内容を数値化できれば、誤差からサンプルサイズを割り出せますが、
評価は主観的なので意味はありません。
また最適停止問題の一つに、
「何人の秘書と面接すれば最も高い確率でn人の応募者を採用できるか?」
という「秘書問題」もあります。数学的には面白いですが、
前提が実用的ではない上に計算された数も大きすぎます。
ちなみに3個の最高のプロジェクトを選びたい場合は、
e-1, e-3/2, e-47/24と証明されているので831件のプロジェクトの中から
306件見て暫定1位を決め、以降に現れた暫定1位を超えるプロジェクトが
全プロジェクト中最良のプロジェクトの確率が最大となります。
※ 831 ÷ e3/2, 831 ÷ e47/24の件数を見れば2位、3位が見つかります。
しかし、これも多すぎます。
306件もプロジェクトは見れない。
時間もかかりますし、何より現実では
「脳に負荷がかかる意思決定」を繰り返せば判断の質もさがります。
そこでシーナ・アイエンガー博士による面白い研究(TED動画)を見つけました。
ジャム缶の種類を6個と24個の試食コーナーに分けて販売した結果、
24個のコーナーの方が足取りは良かったですが、
6個のコーナーの購入率は24個コーナーの6倍でした。


他の例では、
投資信託の商品数を2から60にあげた結果、
投資の実行率が約15%下がったそうです。

「選択肢が少なすぎると満足度は低いが、
多すぎると逆にストレスになって実行に至らない」
確かにアンケート調査でも長すぎると途中で
面倒くさくなって「どちらでもない」ばかり選んだり
旅行パッケージプランも後半は「デフォルト」を選んでしまいがちです。
意思決定が負担になって「テキトー」になってしまっては
本末転倒なので、今では「スマホをいじらないでいられる時間内」で
特に数は決めずにプロジェクトを見ています。
Fund6では50個くらいのプロジェクトを見ましたが、
人間がストレスなく一度に選択できる平均値が7個という話も
聞いたことあるので、10個でも5個でもいいと思います。
最も資金を有効に配分出来て、ADA価値をあげる
Bestなプロジェクトは選べないかもしれませんが、
自分の中でBetterなプロジェクトは選べます。
投資家のウォーレン・バフェットも
「明らかに間違うより、概ね正しいほうが良い」
と言っていますしね。
❏ 「良い」カタリストプロジェクトって何?
カルダノADA価格を上昇させるプロジェクトとはどういうプロジェクトでしょうか?
どのプロジェクトに投票すべきか考える前に、
まず「良いプロジェクト」の特徴を整理しないと選びようがありません。
- DeFiやNFTアートはイーサリウムでも活発に取引が行われているしADA上昇に繋がる気がする
- カルダノへの脅威対策プロジェクトは必要だけど優先順位は高いのだろうか?
- ルワンダ開拓プロジェクトとエチオピア開拓プロジェクトのどちらを優先すべきか?
- 再生エネルギー導入の優先度は教育プログラムとどちらが高いだろうか?
難しいですよね。
もう一度カルダノを都市開発に見立ててみましょう。
現実の都市開発では、どのようなプロジェクトが優先されるのでしょうか?
国際開発センターの資料によると、以下を重点的に査定してプロジェクトを
選定する事が都市成長に繋がると触れられています。
- 広範囲の人々に持続性・信頼度が高く、強靭(レジリエント)なインフラの提供
- 製造業の発展が経済安定・雇用・社会安定の原動力になる
- 信用取引へのアクセスで経済発展・イノベーション
- 省エネ化で製造業の付加価値を増加
- 研究開発で未来に投資
- ミッドテク・ハイテク産業で付加価値の創造 → 労働生産性の向上
- ICT(情報通信技術)へのアクセスで経済成長度を加速
しかしこれら『最終的には全て必要』なのは分かりますが、
予算は有限です。
「今の予算」ではどの開発を優先すれば良いでしょうか?
そこで世界銀行は、インフラ投資に優先順位をつける「ツール」として
「Infrastructure Prioritization Framework」(以下IPF)を作成しました。
直訳すると『インフラ優先順位付けフレームワーク』です。
325ページの長い資料ですが、要約すると
『社会環境指標の数値と金融経済指標の数値を足した時に、
最も高い数値から順番にプロジェクトを推進すべき。』
と書かれています。
もっと日本語にすると、
『環境によくて生活も豊かにしてくれて景気も良くなる
プロジェクトをランキングにして上から投資してね。』
という意味です。
とりあえずIPFに従い、カタリストプロジェクトに当てはめて、
評価の基準を作ってみます。
社会環境指標 | 受益者数 | カルダノの外で恩恵を 受ける人の数 |
プロジェクトによって 直接発生する仕事の種類 | 管理・設計・開発・ 販売・広告等など |
|
貧困度数 | 対象の貧困度が高ければ 影響度も大きい |
|
環境への影響 | 環境に優しいか |
|
金融経済指標 | 内部収益率 | 見込みの利回り |
乗数効果 | 続けて投資した時に 所得や消費が増えるか |
|
外部性 | プロジェクトの経済活動が 他の経済活動に影響するか |
|
実現性 | 実現性が高いか 実装リスクが低いか |
本来はそれぞれの指標を構成するデータを収集して、
機械学習みたいに主成分分析するらしいのですが・・・
ここでは誰でも手軽に評価が出来るように、
主観で5段階評価するだけにします。
例えば
- 受益者数 → 少し多そうだから4
- 仕事数 → 少し少ないから2
- 貧困度数 → GDP高そうだから1
- 環境の影響 → 特になさそうだから3
- 内部収益性 → 要求額に対してリターン高そうだから5
- 乗数効果 → 追加投資すればもっと利益増える仕組みだから5
- 外部性 → 他のサプライチェーンもマネしそうだから4
- 実現性 → 難しそうだから2
ここまでざっくりさせて良いと思います。
10段階でも3段階でも良いですが、見るプロジェクトの数に
比例して段階も増やさないと「全部同じ評価のプロジェクト」が
増えてしまいますので調整してください。
実際にIPFを使って評価する例は後述します。
❏ どのプロジェクトを優先的に見始める?
いざプロジェクトを選出する時に、どこから見たら
いいのか迷うのかもしれません。
ニッパチの法則、またはパレートの原則に従うと
「2割のプロジェクトがカルダノ貢献の8割に寄与する」
と推測できるかもしれませんが、
どれがその2割の「スーパープロジェクト」かは分かりません。
プロジェクトを見る順番として以下に
例を出してみたので良かったら参考にしてみてください。
➢ IOGの資金分配額を基準に選ぶ
IOGは既にプロジェクトを分類していて、
それぞれの部門の資金割当額を教えてくれてます。
Developer ecosystem | DApps開発支援 | $1,005,000 |
DApps & Integrations | DApps開発 | $250,000 |
Grow Africa, Grow Cardano | アフリカ支援で カルダノ発展 | $250,000 |
Scale-UP Cardano's DeFi Ecosystem | DeFi開発支援 | $250,000 |
Atala PRISM DID Mass Scale Adoption | Atala PRISM DID | $250,000 |
NFT Business | NFTビジネス | $200,000 |
DLT Entrepreneurship Toolbox | アーリーステージの 起業家の教育 | $150,000 |
Disaster: When all is at stake | 耐災害戦略 | $150,000 |
Proposer outreach | 起業家にカタリストを 使ってもらう | $100,000 |
Metadata challenge | メタデータ活用法 | $100,000 |
Scale-UP Cardano's Community Hubs | カルダノ認知度向上 | $100,000 |
Improve and Grow Auditability | 採択後の監査方法 | $100,000 |
DeFi and Microlending for Africa | アフリカ向けDeFi | $90,000 |
Distributed decision making | 意思決定の分散化 | $75,000 |
Catalyst value onboarding | カタリスト参加率向上 | $75,000 |
Multilingual resources | 多言語対応 | $75,000 |
Cardano Emerging Threat Alarm | 潜在脅威の対応 | $50,000 |
Partnership for Global Adoption | 世界規模で導入 | $30,000 |
上の表は分配額の高い順に並び替えたものです。
IOGが多額の資金を割り当てているイコール
IOGが考えるその分野のカルダノへの影響力の大きさという
推測に基づく事になりますが、
このランキングを基準にプロジェクトを選ぶ事も出来ます。
パレートの法則はフラクタルの様に細分化出来るため、
10件のプロジェクトを評価したい場合は、
上位5つのカテゴリからそれぞれ20%である2件ずつ選びます。
➢ それぞれのカテゴリのカルダノへの影響度を主観的に考えて選ぶ
先程のIOGのカタリストのカテゴリに、主観で構わないので
理由付けして重要度をランキング化します。
以下はKURISが独断と偏見で作成したランキングです。
NFT Business | NFTビジネス | NFTはホットワードだし、 トレーサビリティを利用した ビジネスモデルが既存である。 導入可能な産業の種類も豊富 |
Atala PRISM DID Mass Scale Adoption | Atala PRISM DID | ほとんどのオンラインサービスは IDログインを必要とします。 DIDはDApps普及の火付け役に なりえる |
Proposer outreach | 起業家にカタリストを 使ってもらう | ビジネスモデルが発展的であれば 雇用もDApps開発も需要に 応じて増えることが期待出来る |
Developer ecosystem | DApps開発支援 | 開発を円滑化する為の ライブラリやフレームワーク があれば開発者数↑ |
DApps & Integrations | DApps開発 | AppStoreのアプリリストの 充実性がiPhoneのバリューの一つ。 それと同じ現象が起こる |
Scale-UP Cardano's DeFi Ecosystem | DeFi開発支援 | 近い将来で言うと最も ADA価格に好影響を与えそう |
Multilingual resources | 多言語対応 | 資料が英語ばかりな事が ボトルネック。 解決すれば新規↑ |
Metadata challenge | メタデータ活用法 | 無限のビジネスモデル が出来そう 契約の幅が広がる事で 弁護士の活躍も↑ |
Catalyst value onboarding | カタリスト参加率向上 | 参加率↑ 提案の競争率↑ 全体の品質↑ 投票の意思決定も気楽 になる |
Improve and Grow Auditability | 採択後の監査方法 | 提案の品質↑ 準備不足の提案↓ 過去投票の間違いにも 気づける |
Distributed decision making | 意思決定の分散化 | 戦略的投票に関する 提案があれば カタリストは進化する |
Grow Africa, Grow Cardano | アフリカ支援で カルダノ発展 | アフリカ発展→ 信用取引→ 膨大な資源へのパイプラインの確立 |
DLT Entrepreneurship Toolbox | アーリーステージの 起業家の教育 | 起業家の教育→人材育成 による波及効果に期待 |
Disaster: When all is at stake | 耐災害戦略 | アセット管理の最適化 復旧方法の向上で必要 |
Cardano Emerging Threat Alarm | 潜在脅威の対応 | エコシステムの中身が 明確化した時に 脅威の定義ができる |
Partnership for Global Adoption | 世界規模で導入 | 導入する為の「手札」が その前に必要 |
DeFi and Microlending for Africa | アフリカ向けDeFi | マイクロレンディング の前にDID→信用 |
Scale-UP Cardano's Community Hubs | カルダノ認知度向上 | コモディティがあれば 人気はついてくる |
「自分の中でどういうプロジェクトを選びたいのか?」を整理すると、
とっかかりとして役立ちます。
「夕食何たべる?」と聞かれても分からない時に、
「肉・魚」「がっつり・軽め」「和洋韓中」の様に分類する過程で
徐々に自分が食べたいものが自分で分かっていく、ような感じです。
➢ 「なんとなく」でカテゴリから選ぶ
カテゴリはあくまでIOGが作ったもので、
そのカテゴリ内のプロジェクトが必ずしも
カテゴリのテーマに沿った物とも限りません。
何も考えず「第六感」でカテゴリを選び、
特段自分が評価したいプロジェクトがなかったら他のカテゴリから選ぶ。
その過程で自分が評価を得意とするカテゴリが分かるので、
今後の為にこれでも良いと思います。
❏ プロジェクトの詳細を評価するには?
IPF(社会環境指標と金融経済指標)を基準に評価しますが、
ここでは他に何を見れば良いか一部参考例を載せます。
➢ 提案内容の評価例①: GDPの観点で評価してみる
既存マーケットのお金がカルダノに流れると
カルダノADAの価値が上がると仮定するならば、
市場規模の大きい産業とカルダノを連携させるプロジェクトは
ADA価格をより大きくあげる可能性が高い、と推測してみます。
こちらは総務省が発表した日本国内GBPの産業別の市場規模を
パイチャートにしたものです。

「そのプロジェクトの参入産業の市場規模は?」
こちらを加味した上でIPFの
受益者数・仕事数・内部収益性・乗数効果などを評価します。
➢ 提案内容の評価例②: プロジェクトの実現性を評価してみる
もしそのプロジェクトが現実世界の業務発展の為にカルダノを使う
という提案内容であれば、一つはブロックチェーンとの親和性を考慮します。
例えばスマートコントラクトとIoTデバイスを
連携してレンタカーサービスを開始する内容の提案だったとします。
※ 既存かもしれませんが、今考えた架空の提案です。
すると気になるのが、
- 設計はどの範囲をオンチェーンでどの範囲をオフチェーンにする?
- スマートコントラクトの対応範囲は?
- IoTデバイスは選定済み?
- デバイスセンサーの対応範囲は?
- レンタカーサービス会社とは契約済み?
- リーガルチェック済み?
- IoTデータにカルダノのスループットは対応可能?
などなど、直面する課題をどれだけ解決済みかで実現性にスコアを付けます。
➢ 提案内容の評価例③: プロジェクトチームの実績を評価してみる
実績もプロジェクト投票における大事な判断材料の一つです。
Google、GitHub、LinkedIn、ホームページ、Discord、Telegram等を
駆使して実績の観点から実現性を評価してみましょう。
ビッグネームを無断で使用した詐欺プロジェクトの可能性もあるので、
『たどり着いた先のページでカタリストに触れているか』も
注意して見ます。
ちなみにサーチするのはプロジェクトマネージャーだけで
構わないと思います。
➢ 提案内容の評価例④: 「貧困度」を評価してみる
IPFでは、社会環境指標の一つである貧困度を加味してプロジェクトを評価します。
もしかしたら子供の時に学んだ記憶や、
メディアからのイメージのまま「貧困度」が更新されていない可能性もあります。
「Google Public Data」では世界銀行提供の地域ベース・国ベースで
GDPの比較が出来るので、より正確な「貧困度」を評価するのに活用できます。

アフリカだけでも一人あたりGDP(以下の画像)がこれだけ分布している事が分かります。
「アフリカ=貧困」では決してありません。

より最新のデータを見たい場合は、世界銀行のHPから参照できます。
❏ さいごに意思決定マトリクスで総合スコアをつける
評価を見比べるには意思決定マトリックスが便利です。
投票はこの意思決定マトリクスの総和が高い順から行います。
以下の例ではプロジェクト5→プロジェクト4→プロジェクト3。
受益者数 | 仕事数 | 貧困度数 | 環境の影響 | 内部収益性 | 乗数効果 | 外部性 | 実現性 | 思い入れ | 総和 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
重み | x 2.0 | x 2.0 | x 1.0 | x 1.0 | x 2.0 | x 2.0 | x 2.0 | x 3.0 | x 1.0 | - |
プロジェクト1 | 2 | 1 | 2 | 2 | 1 | 1 | 2 | 2 | 3 | 27 |
プロジェクト2 | 1 | 1 | 1 | 3 | 2 | 3 | 2 | 4 | 2 | 36 |
プロジェクト3 | 3 | 3 | 1 | 1 | 3 | 3 | 3 | 2 | 1 | 39 |
プロジェクト4 | 3 | 5 | 2 | 1 | 3 | 4 | 3 | 2 | 1 | 46 |
プロジェクト5 | 2 | 3 | 4 | 4 | 3 | 5 | 3 | 2 | 1 | 47 |
こちらの表では重みが追加されていますが、
重みとはその評価項目をどれだけの比重で点数化するのかというものです。
思い入れは例えばワインのトレーサビリティを使ったトークン化プロジェクトを
評価する時に、個人的にワイン農家を応援したい場合などです。
この項目はなくても構いません。
意思決定マトリクスを使う上で注意点が2つあります。
➢ 注意点① 同じカテゴリから選んだプロジェクトのみを同時に評価する
例えばDApps開発プロジェクトとアフリカ支援プロジェクトは、
社会環境指標や金融経済指標が得てして異なる傾向があるので
同じ意思決定マトリクス上で評価はしません。
Calbeeの「ポテトチップスうすしお味の業績」を評価する時、
「のり塩味」の売上と比較はしても
「じゃがりこの売上」を入れない感じです。
➢ 注意点② 要求額と予算案を照らし合わせて、超過したら「NO」に投票する
例えばDApps開発プロジェクトの予算が200万ドルだとして、
プロジェクトを優先順位順に投票した時、
4つ目のプロジェクトで200万ドルを越えてしまうとします。
その場合は、4つ目以降のプロジェクトには「NO」で投票します。
悪いプロジェクトじゃないのに「NO」と投票するのは
心苦しいと想いますが、
「今回の予算ではプロジェクト5,4,3はプロジェクト1,2より優先すべき」
という評価結果を遵守して投票をするためにも
「NO」投票は「YES」投票と同じくらい重要です。
さいごに
ここまで読んでいただいた方は猛者です。
長い間お付き合い頂きありがとうございます!
個人的にカタリストプロジェクトを選ぶ過程において、
意思決定の練習が出来ることもメリットの一つだと感じています。
例えばICOが開催される時に数百個のトークンの中から選ぶには?
寄付をしたいけどNPO団体を選定するには?
暗号資産投資やトークン投資の様にリスクヘッジも必要としないですし、
寄付のように出費すらする必要もない。
無償で意思決定の練習が出来る上にカルダノの価格もあがります。
そう考えた時に、私の中で
「カルダノはカタリストっていう面白い事をしてるんだなぁ」
という見方から変わりました。
エコシステムはIOGが主体となって発展しているイメージがあるかもしれませんが、
本質はカタリストを通じてADAホルダーのキックスタートで
エンジンが動き出すと思っています。
この全員参加型の「街づくり」を一緒に盛り上げていきましょう。
最後までご高覧いただき、誠にありがとうございます!